肺の所見
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異常陰影
胸部画像上に判断できない所見を認め、危険性や疾患の種類をこの段階で特定することは出来ません。胸部CT検査等の精密検査が必要となります。
右胸心
本来は胸部の左側にある心臓が右側にあります。生まれつきによるもので、特に問題ありません。
炎症の治癒像
結核や肺炎などが治癒した痕跡にみられ、特に問題ありません。
横隔膜拳上
片方または両方の横隔膜が通常の位置より上昇しています。肥満や腹部疾患の横隔膜神経の麻痺、横隔膜弛緩症、肝腫大などでみられ、精密検査が必要になる場合があります。
横隔膜角鈍化
通常、肺と横隔膜が形成する角が鋭角ですが、炎症や胸水貯留などによって鈍化してくることがあります。胸水が溜まっている可能性がある時は、胸部CT検査等の精密検査が必要な場合もあります。
- か
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過膨張
肺気腫のように肺の閉塞性換気障害で吸気が、すばやく息を吐き出すことができないと、肺の中に徐々に空気が溜まり、肺が全体に膨らんで容積が増え過膨張になっている状態です。
間質性肺炎
間質性肺炎は、「間質」という肺胞と肺胞の間にある組織に炎症が起きる病気の総称です。原因が判明しているマイコプラズマ肺炎,じん肺などと、原因不明のものもあります。共通する症状は、進行すると咳や息切れが起こり、最終的には酸素吸入などが必要な状態になることもあります。
気管支拡張
気管支が拡張した状態です。慢性的な咳、痰、呼吸困難、痰に血液が混じるなどがあれば受診が必要となります。
気胸
胸膜(肺の表面を覆う2枚の薄い膜)が破れることによって胸腔(胸膜と胸膜の間)に空気が貯まってしまう病気です。胸腔に空気が入ると肺が萎んでしまい、胸痛や呼吸困難などが起きますので精密検査をお勧めします。
気腫性変化
肺にある肺胞が炎症や大気汚染などにより、組織が破壊されガス交換ができなくなっている状態です。気腫性変化が拡大していくと、ブラといわれる袋状の気腫性嚢胞になり、肺のガス交換機能はますます低下します。病状により差はありますが、咳、痰、呼吸困難、チアノーゼとなることもあります。
胸水
胸部に通常存在しない水がたまった状態です。心不全、肺の炎症、腫瘍がある場合などにみられます。
胸膜の石灰化影
肺を包む胸膜にカルシウムが沈着するものです。肺結核、塵肺症などの場合に見られます。
胸膜肥厚
胸膜とは肺を包む膜で、その厚みが異常に増した状態です。細菌やウィルス等による炎症が治癒した跡で、治癒像のひとつです。胸膜炎等の痕跡としてみられますが、悪性胸膜中皮腫の可能性がある時は、精査が必要となります。
胸膜癒着
胸膜の一部が炎症のため癒着するもので、胸膜肥厚と同様に治癒像です。治癒像の痕跡としてみられますが、精査が必要になる場合があります。
空洞影
病変により死んだ組織が排除され、その後に空間が形成されたもので、肺結核、真菌感染、肺膿瘍、肺がんなどに見られます。結核や腫瘍の存在などが疑われるため、精査が必要です。
結核
結核菌という細菌が体の中に入り、増えることによって起こる病気です。日本では結核の約8割は肺です(肺結核)。結核菌に感染してもすぐに病気にはならず、感染後発病する人は10~15%程度です。初期の症状は風邪と似ていますが、咳,痰,発熱などの症状が長く続くのが特徴です。精密検査をお勧めします。
結節影
胸部エックス線画像に映った直径3cm以下の類円形の陰影をいいます。肺がん,転移性肺腫瘍,結核、肺真菌症、非結核性抗酸菌症、陳旧化した肺炎、良性腫瘍などに見られます。胸部CT検査等の精密検査が必要となります。
硬化影
細菌・ウィルス感染等による炎症が治癒した跡です。治癒像の痕跡としてみられますが、精査が必要になる場合があります。
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縦隔拡大
縦隔(左右の肺の間)の幅が広くなっている状態です。炎症や腫瘍,大動脈瘤、縦隔腫瘍などが疑われるため精密検査が必要といなります。
心陰影の拡大(心拡大)
心臓の陰が拡大し、肺野に対する心臓の陰の大きさが基準値を超えています。心肥満、心不全、心臓弁膜症などが疑われます。精密検査となっている場合は、受診してください。
人工的異物
手術による金属片やペンダントやネックレスなど、人工的異物による影が見える場合です。
浸潤影
肺野の浸潤性(周囲との区別がはっきりしない)陰影です。肺結核,肺炎球菌肺炎,マイコプラズマ肺炎等の肺感染症が疑われます。
脊柱側弯(変形)
背骨が変形、または左右どちらかに側弯(湾曲)しています。側弯症や変形性脊柱症などが疑われ、突発性と先天性があります。
石灰化影
細菌・ウィルス感染等による炎症が治癒した跡です。肺結核などが治ったあとにカルシウム等の石灰分が沈着して白く映る陰影です。普通は心配ないですが、治癒像と言い切れないときに要経過観察または要精密検査とすることがあります。
線維化
間質に炎症が起こり、壁が厚く硬くなっている状態です。その為、肺胞を取り囲む血管との間で酸素の交換ができず、息苦しくなったり、咳が出るようになります。間質性肺炎や肺線維症などが疑われます。
線状・索状影
太さが1~2mmの細い陰影を線状、2~3mmのやや太い陰影を索状影と言います。炎症性の変化で起こり、殆どの場合、炎症の治癒後にできる陰影です。
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のう胞・ブラ
肺胞の壁の破壊や拡張により、隣接する肺胞と融合し大きな袋になったものをいいます。この袋状のものが、破れて気胸を起こすことがあります。気胸になると呼吸困難や胸痛をおこすため、必要に応じて精査や治療が必要となります。喫煙者の方は、禁煙をしましょう。
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肺炎
細菌感染などで、肺に急性の炎症が生じた状態です。
肺がん
肺に発生する悪性腫瘍です。癌が発生する組織によって腺癌,扁平上皮癌,小細胞癌,大細胞癌などの種類があります。原因の7割はタバコですが、その他に受動喫煙,環境,食生活などが原因に挙げられます。無症状なことも多いので、精密検査をお勧めします。
肺気腫
酸素と炭酸ガスの交換を行っている「肺胞」の組織が壊れ、肺にたまった空気を押し出せなくなる病気です。 慢性閉塞性肺疾患(COPD)の代表例で、確定診断には呼吸機能検査が必要となります。本人の喫煙が原因ですが、受動喫煙による影響も否定できません。
肺血管影の異常
肺の血管が通常の太さと異なる所見があります。太くなっている場合は心臓機能低下、見えにくい場合は肺気腫などが考えられます。
肺門理増強
肺血管が複雑な網目状陰影に写っていたり、または異常に強調されている所見です。心不全など で肺血管が太くなったり、肺血管周囲に浮腫状変化が生じたり、気管支周囲に炎症が起きたりすると目立つようになります。肺血管は複雑な為、健常者でもこの診断がつくことがあります。
瘢痕
肺感染症が治ったあとに残った小さな痕跡の陰影です。
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慢性閉塞性肺疾患(COPD)
従来、慢性気管支炎や肺気腫と呼ばれてきた病気の総称で、有害物質を長期に吸入曝露することで生じた肺疾患です。最大の原因は喫煙であり、喫煙者の15~20%がCOPDを発症します。主な症状として、慢性的な咳や痰、労作時呼吸困難などがありますので、精密検査をお勧めします。
無気肺
気管支が肺腫瘍や炎症、異物などにより閉塞し、空気の出入りがなくなった為に部分的に肺が縮んだ状態です(閉塞性無気肺)。
網状影
網の目状に見える陰影がみられ、肺線維症(間質性肺炎)などが疑われます。
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粒状影
直径数mm以下の顆粒状の陰影が広く分布してる状態です。粟粒結核、肺真菌症、びまん性汎細気管支炎などが疑われます。
肋骨の骨硬化像
肋骨内にカルシウムが沈着するもので、骨折後によく見られる所見です。